クロス(壁紙)は布や紙、ビニールなどの素材でできており、壁の保護やお部屋の装飾を目的として貼られています。最近では、消臭や防カビ効果がある高機能なクロスが販売されており、デザインも豊富です。また、クロスを変えるだけで部屋の雰囲気が一新されるので、リフォーム時に張替えを検討している方も多いのではないでしょうか?今回は、日本の住宅で主流な、6種類の壁紙について解説します。

ビニールクロスの特徴

クロスの中でも多用されているのがビニールクロスです。
他の素材に比べ安価で、品質も安定しており、耐久性も高くお掃除がしやすいクロスで、色やデザインが豊富です。

ビニールクロスは、塩化ビニール樹脂などを主な素材とするビニールシートに紙などを裏打ちしたものです。
表面加工の方法によっても分類することができ、たとえば、表面に凸凹のあるエンボス加工や発泡させたもの、プリントを施したものなど多種多様。クロスにさまざまな機能を持たせている商品も多くみられます。

価格が安く、耐久性が高く、水を通さないため油汚れも拭き掃除で簡単に落とせるのが魅力です。
消臭・抗菌・防カビなどの工夫された機能を備えた商品も次々に開発されています。

一方で、デメリットとして有害物質であるホルムアルデヒドが接着剤に含まれるため、健康面への影響や、廃棄で焼却する時にダイオキシンが出てしまうことを心配されている傾向があります。
そのため最近では、塩化ビニールの使用量を軽減、糊の部分をデンプン糊にするなどといった試みも続けられていますが、シックハウス症候群などのアレルギー対策をしたい方は避けたほうが良いかもしれません。

紙クロスの特徴

紙クロスは、特に欧米で採用されることが多いため、パルプを原料とした洋紙タイプの輸入商品が多数あり、プリント加工やエンボス加工された物も多く見られます。

和紙、ケナフなど非木材紙を原料としたものなどもあります。

紙は音を吸収し、空気を通す素材であり、また環境や健康への配慮がなされている素材として注目されています。ほとんどが輸入壁紙ですが手すき和紙の紙クロスもあります。

デメリットとしてビニールクロスに比べて薄いため、下処理を怠ると下地の目地が出てしまい、特に凹凸がある壁に張るのが難しいです。
また、時間経過によって膨張・収縮する可能性があることから、やはり目地がやがて目立ってきてしまうかもしれません。

このため、紙クロスの施工が得意な業者に依頼しないと失敗してしまう恐れがあります。
また、良い業者であっても施工の手間がかかることから、費用が高額になりやすいです。
さらに擦れに弱いため、長持ちさせたい場合は注意が必要です。

なお、商品によって、水拭きができる物とできない物とがあります。
撥水性がない紙クロスの場合、汚れが付着するとそのままシミになってしまうリスクがあります。

織物クロスの特徴

織物クロスは、レーヨン、絹、麻などで作られるクロスです。 平織りや綾織、不織布などがあります。

高級感や重厚感があり、ゆったりとした雰囲気を演出してくれるため、美術館やホテルで取り入れられていることが多いです。
破れにくく頑丈で、水に濡れても伸びにくいという性質があります。

布素材ならではの風合い・凹凸感が美しく、また紙クロスと同様で通気性に優れており、さらにジメジメしている時には湿気を吸収・乾燥時には水分を放出してくれます。
基本的に自然材料を使うため、化学物質が不安という方からも人気があります。

デメリットとして汚れが付着すると落としにくく、防火性のある商品が限られているため、キッチンでの使用にはほぼ向きません。
また普及率が高くないため、取り扱っている施工業者を探すのが大変かもしれません。

木質系クロスの特徴

木質系のデザインは、カントリー調の空間にしたい方や、温もりのある雰囲気を作りたい方に最適です。腰壁として採用することで、空間全体がスタイリッシュになるため、おしゃれな内装にしたい方にも適しています。

デメリットとして他の素材のクロスと比べると高額になる傾向があります。
このため、全体的に張るのではなく、アクセントクロスとして採用する方が多いです。

無機質系クロスの特徴

無機質系クロスには、自然素材の土や石、セラミックやガラス繊維などを主な原料としています。リサイクル素材で作られた物もあります。
素材を活かした個性的な物や、シンプルモダンな物など、多種多様なデザインが幅広く存在します。

珪藻土や漆喰といった無機質の素材を、不燃性の紙の上面に施しているため防火性に優れており、塗装した壁のような味わいのある風合い・質感を、リーズナブルな値段で実現できます。

デメリットとして藻土クロスや漆喰クロスは、塗装した壁と比べると見劣りしてしまうため、本物志向の方には安っぽく感じてしまうかもしれません。
また、使用する珪藻土や漆喰の量が限られていることから、塗り壁ほどの調湿・消臭性はないので、期待しすぎないようにしましょう。

手入れの仕方として、水拭きではシミになる可能性があるため、汚れた部分に消しゴムをかけるか、乾いたタオルで叩く方法がおすすめです。

なおビニールクロスと比べると薄く、下地に追従する力が弱いため、下の壁の凹凸やクロスの継ぎ目が目立つ可能性があります。
施工業者選びは、慎重に行いましょう。

 

オレフィンクロスの特徴

ポリエチレン・ポリプロピレンといった合成樹脂が主原料で、比較的ビニールクロスと近い性質を持っており、塩化ビニールの使用を軽減するために、普及してきました。

オレフィンクロスの中には「木質系」のようなデザインの物や、石目調のタイプもあります。

ビニールクロス同様、汚れに強く、ホコリや手垢(てあか)が付いた際には水拭きすればOKです。
表面強度が高くキズも付きにくいので、機能的な壁紙と言えるでしょう。

焼却した際に煙・塩化水素などの有毒ガスがほぼ発生しないという利点があるため、「環境に優しいクロスにしたい」という方からも注目されています。

デメリットとしてビニールクロスと比べると、価格がやや高い点です。
デザイン性の高さ・清掃性のしやすさに優れているため、短所は少ないほうですが、無機質系クロスと同様で、施工が上手な業者が限られます。